TV、テレビ、自転車ときどきキッチン

Team 片手業・昭和の子どもの物語 小説、エッセイなど

2014-01-01から1年間の記事一覧

小説 彼方のゆめちゃん  -7- 「おねえちゃんのお客さん」

第7話 「おねえちゃんのお客さん」 日曜日の事でした。おねえちゃんにお客さんがありました。おねえちゃんはこの春から高校へ通うようになり、新しい友達ができたのです。おかあさんはお茶をいれたり、お菓子をだしたり忙しそうです。ゆめちゃんは気になって…

小説 彼方のゆめちゃん  -6- 「勉さんと勤くん」

第6話 「勉さんと勤くん」 ゆめちゃんが夕食前の時間を持て余していると、玄関の方が騒がしくなりました。そのうち、勝手口の外の路地でドタドタドタと、足音が響きました。そして、間をおかずに「つとむーっ」と言う叫び声と共に、ズタズタズタと騒がしくな…

小説 彼方のゆめちゃん  -5- 「お風呂」

第5話 「お風呂」 ゆめちゃんの家にはお風呂がありませんでした。そのかわり、近所に大きな共同浴場があります。小学校の運動場のような広場の縁に体育館のような建物があり、男の人と、女の人のお風呂があります。浴槽も大きな楕円形をしていて、真ん中で仕…

小説 彼方のゆめちゃん  -4- 「成績表」

第4話 「成績表」 この日、おとうさんは朝ご飯が終わると、ゆめちゃんに「ぺるのお家を新しくするぞ」と言いました。ゆめちゃんは、朝からおとうさんのお手伝いです。縁の下から古材を出してきたり、釘抜きで、釘の抜き方を習ったり、まだ肌寒いというのに、…

小説 彼方のゆめちゃん  -3- 「ペル」

第3話 「ペル」 ゆめちゃんはおにいちゃんが好きだけれど、あまり相手をしてくれません。そのおにーちゃんが珍しく、ゆめちゃんに「剣」を作ってくれると言いました。ゆめちゃんの目が輝きました。おにいちゃんは竹を切ってきて、枝を払うと、ゆめちゃんを物…

小説 彼方のゆめちゃん  -2- 「隣りのお姉さん」

第2話 「隣りのお姉さん」 ゆめちゃんのお家の左隣にお姉さんがふたりと、寝たきりの弟さんが住んでいます。蔦江(つたえ)さんと美佐子さんとマー坊です。マー坊は、ほんとうは昌夫さんと言います。蔦江さんは、若いのに、なり振り構わず動き回る働き者です…

小説 彼方のゆめちゃん  -1- 「記憶」

第1話 「記憶」 ゆめちゃんの最初の記憶は「おかあさんの膝の上」です。おかあさんが何をしていたのかはわかりません。柔らかい、春の日差しに誘われるように縁側に座り、ゆめちゃんを膝の上に抱いていました。ゆめちゃんは気持ちの良さに、時折、意識を失い…